一般内科・救急疾患
一般内科・救急疾患
間質性肺炎って こわい病気?
「間質性肺炎」をインターネットで検索すると、多くは特発性肺線維症(IPF)について書かれていて、「怖い病気ですか」と尋ねられる事が少なくありません。しかし、一口に間質性肺炎といっても、その種類や進み方はさまざまで、すべてが同じ病気ではありません。
肺は無数の小さな袋(肺胞)からできています。間質性肺炎とは、この肺胞の壁や周囲の組織(間質)に炎症や線維化(硬くなること)が起こる病気の総称です。
原因としては、膠原病、薬剤、粉じんの吸入、過敏性肺炎などがあります。一方で、原因を特定できないものは特発性間質性肺炎(Idiopathic Interstitial Pneumonias:IIPs)と呼ばれます。現在では、何らかの免疫学的な異常が病態に関与している可能性が考えられていますが、その詳しい仕組みはまだ十分には解明されていません。
特発性間質性肺炎には、病理組織学的な特徴によって8つの病型が知られています。
これらは予後や治療への反応性が大きく異なるため、病型を正確に診断することが非常に重要です。
例えば、特発性肺線維症(IPF)は進行性で予後不良となることが少なくありません。一方、特発性器質化肺炎(COP)や非特異性間質性肺炎(NSIP)はステロイド治療が奏功し、比較的良好な経過をたどる患者さんも多くみられます。
そのため、間質性肺炎では高分解能CT(HRCT)、血液検査、呼吸機能検査に加え、必要に応じて気管支鏡検査や肺生検などを組み合わせ、病型を慎重に診断します。また、炎症所見や画像・病状が安定している場合は治療を急がず経過観察する事も少なくありません。
治療はここ数年で大きく進歩しています
従来はステロイドや免疫抑制薬が治療の中心でしたが、線維化が進行するタイプの間質性肺炎では抗線維化薬が使用されるようになりました。代表的な薬がオフェブ®(一般名:ニンテダニブ)です。
当初は特発性肺線維症(IPF)の治療薬として承認されましたが、現在では適応が拡大され、膠原病関連間質性肺疾患や慢性過敏性肺炎など、治療を行っていても病状が進行する進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)にも使用できるようになっています。
抗線維化薬は病気を治す薬ではありませんが、肺機能の低下速度を抑えることが期待できます。臨床試験では、肺活量(FVC)の低下速度をおよそ半分に抑制することが示されており、病気の進行を遅らせる重要な治療選択肢となっています。

診断には「Multidisciplinary Discussion(MDD)」が重要です
間質性肺炎の診断と治療方針の決定には、Multidisciplinary Discussion(MDD:多職種・多領域専門家による検討)が国際的にも推奨されています。呼吸器内科医だけではなく、放射線診断医、病理医、膠原病内科医などが、それぞれの専門的な視点から画像所見、病理所見、臨床経過を総合的に評価することで、より正確な診断と最適な治療方針につながります。

地域のかかりつけ医として
間質性肺炎は確かに注意が必要な病気ですが、早期発見と適切な診断、病型に応じた治療によって、長期間安定した状態を保てる患者さんも増えています。当院は、日頃の診療において間質性肺炎の早期発見に努めるとともに、必要に応じて専門病院へ速やかにご紹介いたします。また、専門病院で診断・治療を受けられる患者さんについても、日頃の健康管理、相談役として、専門病院での診療を支援いたします。
咳が長引く、階段や坂道で息切れがする、健康診断で胸部レントゲンの異常を指摘された――そのような場合は、早めに呼吸器専門医に相談ください。
京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは間質性肺炎の早期発見、診断や治療中の患者さまもかかりつけ医の立場から支援いたします。
参考文献
1. 日本呼吸器学会.特発性間質性肺炎診断と治療の手引き2022.南江堂.
2. 日本呼吸器学会.膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2023.
3. Raghu G, et al. An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline: Diagnosis of Idiopathic Pulmonary Fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 2018;198:e44-e68.
4. Flaherty KR, et al. Nintedanib in Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases. N Engl J Med. 2019;381:1718-1727.
5. Distler O, et al. Nintedanib for Systemic Sclerosis-Associated Interstitial Lung Disease. N Engl J Med. 2019;380:2518-2528.
~呼吸と健康のコラム~
PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査でわかる「睡眠の質」とCPAP治療のお話し
「7時間寝ているのに疲れが取れない」
「昼間につい居眠りをしてしまう」
「朝起きた時からだるい」
このような症状がある方は、睡眠時間は十分でも、睡眠中に無呼吸が繰り返され、「睡眠の質」が低下しているのかもしれません。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査では、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)を調べることが第一の目的です。AHIはCPAP治療の適応を判断する重要な指標ですが、治療の目的はAHIを改善することだけではありません。
CPAP治療によって期待される効果には、
★ 日中の眠気の改善
★ 高血圧・心筋梗塞・脳卒中などのリスク低減
★ 集中力や生活の質(QOL)の改善
★ 睡眠の質の改善
などがあります。
簡易検査では主にAHIを評価しますが、PSG検査では「どのような睡眠をしているか」まで詳しく調べることができます。
PSG検査でわかること
① 睡眠効率
ベッドで過ごした時間のうち、実際に眠っていた割合です。
例えば8時間ベッドにいて実際の睡眠時間が6時間なら、睡眠効率は75%です。一般的には85%以上が良好とされています。
② 深い睡眠(N3睡眠)約15~25%
深い睡眠は、身体や脳の疲労回復に欠かせません。
SASでは無呼吸のたびに脳が覚醒するため、深い睡眠が減少し、十分な休息が得られなくなります。
③ レム睡眠(REM睡眠)約20~25%
夢を見る浅い睡眠として知られていますが、記憶の整理や学習、感情の安定にも重要な役割があります。
SASでは覚醒しやすい状態になるため、レム睡眠も減ります。
④ 覚醒指数(中途覚醒)
一晩の間に脳が何回覚醒したかを示す指標です。
SASでは本人が気付かないうちに何十回、重症例では何百回も脳が覚醒し、睡眠が細切れになってしまいます。
典型的なSAS患者さんのPSG検査の例
この患者さんでは、一晩に250回以上の無呼吸・低呼吸が起こり、そのたびに脳が覚醒していました。
その結果、
・朝起きても疲れが取れない
・日中の強い眠気
・集中力の低下
・血圧の上昇
といった症状がみられていました。
CPAP治療後
まで改善し、「朝すっきり起きられるようになった」と実感される患者さんも少なくありません。

睡眠は「長さ」だけでなく、「質」がとても大切です。
SASの患者さんにとってCPAP治療は、高級な寝具よりも科学的に検証された睡眠の質を改善する治療です。
いびきが大きい方、日中の眠気が強い方、朝起きても疲れが残る方は、睡眠の質が低下している可能性があります。
令和8年6月からは、一定の条件※を満たす場合、自宅でも精密検査(在宅PSG)が受けられるようになりました。
(※問診、身体所見及びその他検査などで睡眠時無呼吸症候群が疑われる方)
気になる症状がある方は、お気軽に当院までご相談ください。

京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を行っています。
~呼吸と健康のコラム~
ちょっとしたうんちく —-♪「インフルエンザ菌」の名前の由来♪—-
医療者の間ではよく知られている話ですが、一般の方も知っているとちょっとした話のネタになるので、今回は「インフルエンザ菌」の名前の由来についてご紹介します。
肺炎の原因となる細菌のひとつに、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)があります。肺炎の患者さんにお伝えすると、感冒を起こすインフルエンザウイルスを連想される事が多いですが、実はインフルエンザ菌はインフルエンザの原因ではありません。
では、なぜこのような名前がついたのでしょうか。
1889~1890年にかけて、世界中で「ロシアかぜ」と呼ばれる大流行が起こりました。1892年、ドイツの細菌学者 Richard Pfeiffer は、患者さんから繰り返し検出される細菌を発見し、「これこそがインフルエンザの原因菌である」と考えました。このため、この細菌は「インフルエンザ菌」と呼ばれるようになりました。
その後も世界では大規模なインフルエンザの流行が続きました。特に1918~1919年に流行した「スペインかぜ」では、世界で推定5,000万人以上が亡くなったとされ、第一次世界大戦による戦死者数を上回るともいわれています。
当時の医師たちは、スペインかぜの患者さんからもしばしばインフルエンザ菌を検出したため、依然としてこの細菌が原因であると考えていました。しかし、患者さんによってまちまちで、はっきりしない状況がつづきました。
当時、日本でも東京帝国大学学派(伝染病研究所)と北里学派(北里研究所)の間で、インフルエンザの原因が「インフルエンザ菌なのか、それとも未知の病原体なのか」をめぐる論争が行われた記録が残っています。また、インフルエンザ菌に対するワクチン開発も試みられていました。(図 参照)

その後、1933年、英国の研究者たちによって、インフルエンザの本当の原因は細菌ではなくウイルスであることが証明されました。電子顕微鏡の発達により、実際にインフルエンザウイルスの姿が確認されるようにもなりました。こうして、インフルエンザの原因ではないにもかかわらず、「インフルエンザ菌」という名前だけが今も残こっています。
現在もインフルエンザ菌は、
中耳炎
副鼻腔炎
気管支炎
肺炎
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪
などの原因菌としてよく知られていて、薬剤耐性を獲得したBLNAR(β-lactamase negative ampicillin-resistant)が増えている事が問題になっています。
医療・治療薬の発達によってできたことですので、昔のインフルエンザ菌にはなかったことと思います。
「インフルエンザ菌はインフルエンザの原因と考えられていた昔の勘違いが今も残っている」
そんな医学史のちょっとした豆知識、いかがでししたでしょうか。
話のネタになれば幸いです。
参考文献
1. Smith W, Andrewes CH, Laidlaw PP. A virus obtained from influenza patients. Lancet. 1933;222:66-68.
2. Taubenberger JK, Morens DM. 1918 Influenza: the mother of all pandemics. Emerg Infect Dis. 2006;12:15-22.
3. Langford BJ, et al. Bacterial co-infection and secondary infection in patients with COVID-19: a living rapid review and meta-analysis. Clin Microbiol Infect. 2020;26:1622-1629.
4. 国立感染症研究所. インフルエンザ菌感染症.
5. Centers for Disease Control and Prevention. History of 1918 Flu Pandemic.
京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは急な発熱、感冒、細菌性肺炎などの診断、治療を行っています。土・日曜診療も行っています。

~呼吸と健康のコラム~ 肺炎球菌ワクチンのお話し
令和8年4月1日から肺炎球菌ワクチンの種類が変わりました
2026年度から、高齢者の定期接種に使用される肺炎球菌ワクチンが、長年使われてきたニューモバックス®(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)から、プレベナー20®(20価肺炎球菌結合型ワクチン)へ変更されました。
あれ?「23価から20価に減って」大丈夫なの?思われる方もおられるかもしれませんが、これは現在流行している肺炎球菌の血清型に合わせるためです。
肺炎球菌には100種類以上のタイプ(血清型)が存在し、流行する血清型は時代とともに変化します。特にワクチン接種が普及すると従来多かった血清型が減少して、それ以外の血清型(non-vaccine type)が増加することがあります。これを「血清型置換(serotype replacement)」と呼びます。
近年は、血清型8、10A、11A、12F、15B、22F、33Fなどによる感染症が問題となっており、これらに対応するためにプレベナー20®が開発されました。さらに、2025年に発売された21価肺炎球菌結合型ワクチン(キャップバックス®)も2027年度から高齢者定期接種への追加が検討されています。

感染症の世界では、人間がワクチンや治療薬によって対策を進める一方で、流行する細菌のタイプも変化していきます。まるで人間と細菌が終わりのない追いかけっこをしているような状況です。
「それなら、もっと新しいワクチンが出るまで待った方が良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし大切なのは、将来を予測することはできませんので、現在利用できる最も有効なワクチンで予防することです。
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による菌血症や髄膜炎などの重症感染症を予防する効果が高いことが知られています(肺炎そのものを予防する効果は限定的です)。ですが、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用することで、肺炎そのもの発症や入院を減らす効果が期待できます(下図)。

そのため、65歳以上の方や、COPD・気管支喘息・糖尿病・心疾患などの基礎疾患をお持ちの方には、両方のワクチン接種をおすすめしています。
当院は京都市高齢者肺炎球菌定期予防接種の協力医療機関です。
接種をご希望の方は予約制で実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

参考文献
京都市情報館
Takaya Maruyama et al. Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial. BMJ. 2010.
京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックではご高齢の患者様の日頃の健康管理、定期予防接種を行っています。
当院の感染対策(院内の換気)をご紹介します
感染対策というと、手指衛生やマスク着用、清掃・消毒を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、呼吸器感染症対策においては「換気」も非常に重要な要素です。
医療機関では一般的に、1時間あたり6~12回程度の換気(空気の入れ替え)が推奨されています。ただし、換気量を増やすだけでは十分ではありません。大切なのは、院内に空気の淀みを作らず、空気がスムーズに入れ替わる環境を整えることです。
新型コロナウイルス感染症の流行時には、急遽多くの医療機関で感染対策病床の整備が進められましたが、既存の建物を改修することの難しさがありました。
その経験を踏まえ、当院では給気口と排気口を院内の対角線上に配置し、院内の空気が奥から入口へと一方向に流れるよう設計しています。
これにより空気が滞留しにくく、効率的な換気が行われています。
実際の空気の流れは、院長が蚊取り線香の煙を用いて確認した動画をご覧ください。
煙がクリニックの奥から入口へ向かって流れていく様子がお分かりいただけると思います。
当院では感染制御活動(ICD)の経験を活かし、手指衛生・マスク着用・換気を組み合わせた感染対策を行っています。
京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは発熱診療・日曜診療を行っています。
今回は呼吸器疾患から少し離れて、季節の話題にふれたいとおもいます。
暑い時期になると、「塩分チャージ!!」「水分補給をしましょう」とよく言われます。
脱水予防のために水分補給が大切なのは分かりますが、では、なぜ塩分も必要なのでしょうか。
その理由は、「汗」による塩分喪失にあります。
熱中症と塩分喪失
大量に汗をかくと、水分とともに塩分も失われます。汗1 Lあたりには食塩約1〜5 gが含まれているとされており※、例えば
程度の塩分を失うことがあります。
そのため、失った汗を「水だけ」で補うと、体内の塩分濃度が低下し、低ナトリウム血症を起こすことがあります。また、塩分には小腸での水分吸収を助ける役割もあるため、水だけを飲む場合に比べ、効率よく水分を体内に取り込むことができます。
こうして循環血液量や発汗機能が保たれることで、結果的に熱中症予防につながると考えられています。
塩分補給飲料の違い
塩分補給の方法としては、塩分チャージタブレット、スポーツドリンク、経口補水液などが考えられますが、塩分濃度にはかなり差があります。
つまり、ポカリスエットの塩分濃度はOS-1のおよそ半分程度です。また、塩分チャージタブレットでポカリスエット相当の塩分量を補おうとすると、1 Lあたり約10粒が必要な計算になります。ちなみに、点滴でよく使用される生理食塩水500 mLには約4.5 gの食塩が含まれています。
なお、「どの経口補水液が最も優れているか」については、現時点では明確な結論は出ていません。状況や発汗量に応じて使い分けることが大切です。
まとめ
熱中症対策で塩分補給が必要なのは、汗とともに失われた塩分を補い、水分吸収を助けるためです。その結果、循環や発汗機能が維持され、熱中症予防につながると考えられています。
これからの暑い季節、無理をせず、こまめな休憩と水分・塩分補給を心がけてください。
Stay Cool !!

参考文献
厚生労働省のリーフレットより

京都市北区のたけむら内科・呼吸器内科では一般内科・急病対応を行っています。
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