喘息・アレルギー性疾患
喘息・アレルギー性疾患
喘息治療の中心は、現在も変わらず吸入ステロイド薬(ICS)による気道炎症を抑える治療です。気道炎症を抑えることは、喘息の原因そのものの治療であり、増悪(発作)の予防につながります。 一方、気管支拡張薬は、たとえ長時間作用型であっても、単独では「増悪」そのものを抑える効果は限定的で、あくまで「症状を和らげる」補助的な役割と考えられています。
そのため従来の喘息治療では、「症状が残る場合にはICSを高用量へ増量する」という”ステップアップ治療”が基本とされてきました。実際、ガイドラインにも段階的に治療を強化していく体系的で”きれいな”ステップ法が示されています。

(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」より)
しかし近年、喘息治療は少しずつ変化しています。現在注目されているのは、「単純に吸入ステロイドを増量する」よりも、作用機序の異なる薬剤を組み合わせて追加するという考え方です。
特に中等症以上の喘息では、ICSを高用量にしてゆくよりも、長時間作用性β₂刺激薬(LABA)や長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を追加した、いわゆる「トリプル製剤(ICS/LABA/LAMA)」が優れていると考えられています。代表的な薬剤としては、テリルジー® や エナジア® などがあります。
実際、CAPTAIN試験やIRIDIUM試験では、単純にICSを増量する群と比較して、ICSはそのままでLAMAを併用したトリプル製剤群のほうが肺機能改善や増悪抑制に優れていることが報告されています。
日常臨床でも「ICSをステップアップしても効果が頭打ちになる」という印象があって、ステロイドへの反応の限界にさしかかると、ICS増量の効果が乏しいと感じる事が少なくありません。
さらに、難治重症喘息に対しては生物学的製剤(抗IgE抗体、抗IL-5抗体、抗IL-4/13抗体薬、抗TSLP抗体など)が広く使用されるようになってきました。
このように治療選択肢が増えたおかげで、最近の喘息診療は患者さんの病態(フェノタイプ)に応じて治療を選択する「個別化医療」の時代になってきたと考えられています。
当院でも個別、病状に応じた治療がご提案できればと考えています。

参考文献
・CAPTAIN試験:Efficacy and safety of once-daily single-inhaler triple therapy (FF/UMEC/VI) versus FF/VI in patients with inadequately controlled asthma (CAPTAIN): a double-blind, randomised, phase 3A trial. Lancet Respir Med. 2021.
・IRIDIUM試験:Once-daily, single-inhaler mometasone-indacaterol-glycopyrronium versus mometasone-indacaterol or twice-daily fluticasone-salmeterol in patients with inadequately controlled asthma (IRIDIUM): a randomised, double-blind, controlled phase 3 study. Lancet Respir Med. 2020.
京都市北山紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは喘息に対する吸入治療、難治重症喘息に対する生物学的製剤治療も行います。
喘息について、少しお話ししたいと思います。
まずは身近な「咳喘息」のお話と、その後に最近の治療の潮流について触れたいとおもいます。
「咳喘息」について
「咳喘息」という言葉を耳にされたことがある方も多いと思います。また、医療機関でそう診断された方も少なくないと思います。 喘息は成人の10人に1人が経験する身近な疾患です。
夜間や早朝に咳が出る、会話や運動をきっかけに咳き込む、季節の変わり目に悪化する—–このような症状は、典型的な「咳喘息」を疑う症状です。
一般的に喘息は、咳とともに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった気管の狭窄音、喘鳴(ぜんめい)や息苦しさを伴う発作があります。一方、咳喘息では、このような喘鳴や強い呼吸苦は目立たず、「咳だけ」が長く続くことが特徴です。
そのため、診察時に喘鳴が確認できれば喘息の診断はつきやすいですが、聴診所見がはっきりしない場合は咳喘息を「疑う」ことになります。私の子供も喘息持ちですが、症状は時間帯や状況によって変動し、咳とともに喘鳴があっても、落ち着くと分からなくなります。
そのため、私は患者さんには「喘息は不整脈に少し似ています」とお話しすることがあります。不整脈も、症状のない時に心電図を取っても分からないことがあります。同じように、喘息もおさまっていると分かりにくい病気です。ですが、“発作が起こりやすい状態”かを検査で知ることはできます。喘息の場合は呼気NO(FeNO)検査や呼吸機能検査などが、その「らしさ」を知る手がかりになります。
また、咳喘息は「咳だけだから大丈夫」というわけではありません。咳喘息の患者さんの約30〜40%は、経過中に典型的な喘息へ移行すると報告されています。さらに、吸入ステロイド治療によって、この移行リスクを減らせる可能性も示されています。
咳喘息の治療は、喘息と同様に吸入ステロイド薬が中心となります。単に咳を抑えるだけではなく、気道の炎症そのものを改善することで、症状の悪化や再発を防ぐことが期待されます。
2〜3週間以上咳が続く場合は咳喘息、喘息なのかもしれません。夜間・早朝に咳が強い場合は、一度ご相談ください。
少し長くなりましたので、最近の喘息治療の潮流については、次回ご紹介したいと思います。
参考文献
京都市北区紫竹のたけむら内科・呼吸器内科クリニックでは咳喘息の診断と治療を行っています。
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